黒い薔薇



題名:黒い薔薇
原題:Gone, But Not Forgotten (1993)
作者:フィリップ・マーゴリン Phillip Margolin
訳者:田口俊樹
発行:早川書房 1994.10.31 初版
価格:\2,000(本体\1,942)


 "King is gone, but he's not forgotten" というのは Neil Young の傑作曲"Rust Never Sleeps" の歌詞だけど、この本のタイトルとはな~んの関係もなかったのはひたすら残念 (^^;)

 ただしこの本は、立体パズル・ブックのように仕掛けだらけで、娯楽性に充ち溢れていた。 このフォーラムでもっと話題になって欲しいと Sysop が願う本の一冊である。多分、ミステリー界では話題になること必須の本だと思う。あいにく『こ
のミス』には評価が間に合わなかったけれど (;_;)。もちろん邦訳では見知らぬ作家であるからだと思う。

 されこの本は「『羊たちの沈黙』をディズニー映画にしてしまうサイコスリラー」なんて評価されていたり、まあ帯の評価を読んだだけで、本好きの人なら読まなくてはいられなくなる類の面白本の予感がしてくる。そして読み出せば、ページターナーの見本みたいなぐいぐい引きつけられる無駄肉のないプロットと来ている。

 さてぼくは『羊たちの沈黙』とこれを比較したくなんかはないんだが、一応、天才殺人者、復讐の天使、離婚問題を抱える女性弁護士、とそれなりにアメリカの求める「今」を盛り込んだ本である。この作者は弁護士ということでそれなりにリーガル・サスペンスの乗り、駆け引きなどもあったりする。これだけサービスがあると、大抵はえげつのないB級の二番煎じホラー映画みたいになってしまうのが常だと思うのだが、あにはからんや、こいつは本物であった。

 逢坂剛のサイコ二転三転ものなどが好きな人には、おすすめの何も考えずに楽しめる一冊である。それほどに、ねじくれ、ひねくれまくってくれたこのプロットは凄かったのである。ああ、楽しかった。

(1994.12.12)
最終更新:2013年04月29日 18:29