蛮賊ども



題名:蛮賊ども
著者:船戸与一
発行:角川文庫 1987.12.20 再版 / 徳間文庫 1993.4.15 初刷 (初刊行は1982年)
価格:\460

 船戸初期長編。舞台はアフリカ大陸、ローデシアから黒人革命のなったジンバブエ。黒人からの搾取で丸々と肥え太った金満家が、法に国外持ち出しを禁じられた自らの財産を秘密裡に傭兵を使って鉄路で運びだそうという計画。主役は9人の傭兵たち。そしてこの計画が黒人ゲリラ組織に洩れ、一方で金塊掠奪を企むプランが進む。またこれらすべてを阻止しようとする政府情報組織。すべてが列車と共にアフリカの大平原を疾走する物語だ。

 文句なしに面白く、ちなみにぼくは百ページほど読んで床に就き、そのまま残り二百数十ページを読破、興奮してとうとう一睡もできず徹夜してしまったという凄玉娯楽大作なのである。相変わらずの皆殺しシーン。混沌とした政治情勢を背景にしっかりと骨太に疾駆するプロット。一人一人の兵士たちの何という個性の際立ち! これはもうただただオススメするしかないのである。

 相変わらず搾取者と被搾取者の構図がまざまざと浮き彫りにされているし、その合間に蠢く外人部隊出身の傭兵たちの病根があらゆる意味で作品をバイオレントな色合いに染め上げている。あくが強いので、この手の匂いを好まない方もいるかもしれないが、この作品は船戸にしてはまだしも抑圧の効いたほうだと思う。どちらかと言えばストーリー展開を主体に楽しめるので、『猛き箱船』『山猫の夏』などでどぎついと感じた方には、初期長編はオススメである。

 1982年作品。当時はまだ船戸のふの字も知らないぼくであった。

(1991/05/01)
最終更新:2006年12月10日 23:28