紳士同盟




題名:紳士同盟
原題:The League Of Gentlmen (1958)
作者:ジョン・ボーランド John Boland
訳者:松下祥子
発行:ハヤカワ・ミステリ 2006.06.10 初版
価格:\1,000

 元軍人だったそれぞれのエキスパートを集め、大胆な銀行襲撃計画を組み立ててゆく。人集め、計画作り、武器集め、そして襲撃と、ここまではよくある犯罪小説。こういった小説たちがどう枝分かれし、個性をものにしてゆくかは、大抵それ以降だ。

 本書では、計画の遂行に向けて、あまりにも個性豊かなキャラクターたちがそれぞれ、一枚岩になり切れず、どこか個人の思惑、心理戦を戦いつつ、日々をある緊張のもとに送るところが独特だ。お互いにお互いをわかりあっていない中で、純粋に作戦遂行のための能力重視での登用。当然、信頼関係が薄く、裏切り者の登場も予想される展開である。

 作戦立案者の主人公は、キューブリック映画『現金(なま)に手を出すな』の原作となるライオネル・ホワイトの『闘争と死と』を参考に計画を組み立てる。その上本書はアメリカ製ノワールではなく、英国小説だ。

 映画版『紳士同盟』はコミカルなタッチの中で、軍隊をそれぞれの事情で辞めさせられた男たちの社会への復讐という傾向で描いているらしい。原作はもっとずっとリアリティに富んでいて、金と戦略のゲーム性に誘われた男たちの一世一代の博打劇のように思われる。

 要するに英国産悪党小説と言い切れる類の。ウェストレイクのドートマンダー・シリーズのように、当然予期できぬことが起こり、しかし失敗の笑いの中で終わるのではなく、もっと厳しく冷ややかにこの小説は走り抜ける。

 1950年代の英国で描かれた強盗小説というだけで興味をくすぐられる。本国ではコンスタントにこの手の娯楽小説を書き続けてきた著者は、何と本邦では初訳。

 映画からは窺い知ることのできない、原作だけの持つその時代の匂いと真実を、少しでも嗅ぎ取る。そんな歴史的興味を頭の片隅にほんの少しだけ残しながら、読んで楽しんでいただきたい、あくまでスタンダード・クライム・ノベルである。

(2006/09/18)