祖国よ友よ


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題名:祖国よ友よ
作者:船戸与一
発行:徳間文庫 1986.5.25 初版
価格:\500

 中短編集。例によってすべてが過激な作品群。短編集では『銃撃の宴』が北アメリカ、『カルナヴァル戦記』が南米と舞台を纏めるている作品集が目立ったが、本書はヨーロッパ各地が舞台になっている。中編が2作あるが船戸作品は中編と言えども一気に読ませるものばかりなので、短編のようにしか感じなかったことを付け加えておこう。

 中編『祖国よ友よ(レジオ・パトリア・ノストラ)』は興味深い作品。主人公が何と名こそ明かされていないが『蛮賊ども』の傭兵の一人、佐伯夏彦なのである。『蛮賊ども』の中で語られる彼のエピソードをそのまま中編化した作品である。(どちらが早く書かれたのか、ちょっとわからないが)本書ではこれがやはり一番光っているのではないだろうか?

 短編『爆弾の街』はヒギンズでお馴染みのベルファーストのこと。ニューヨークで狙撃の腕を買われた主人公が、意志にかかわりなくマフィアの先棒を担ぐことになってしまう設定で、祖国を失った根無し草の宿運の悲しさを感じさせる。

 短編『どしゃぶり航路』ハイジャックされてオランダの空港に留まるDC-10の機内ストーリー。全編緊迫に包まれた、いかにも読ませる物語だ。主人公のアナーキーな性格が如何にも船戸的だ。

 中編『北溟の宿』脱獄犯たちの逃亡譚。互いに疑心暗記なばかりか、隙さえあればあいてを殺そうという憎悪に満ちた三人組。破滅しか待っていないことを容易に予感させるバイオレンス・ストーリーだ。

 以上四編。これでぼくの知る限りの船戸作品は読破である。船戸作品に外れはほとんどないので、長編が苦手という方には、この手の短編集をオススメしたい。

 なおこの本の解説はお馴染み関口苑生氏でありました。

(1991/05/03)