ドルチェ





題名:ドルチェ
作者:誉田哲也
発行:新潮社 2011.07.15 初版
価格:\1,476


 誉田版<女刑事>第三のシリーズが登場、ということで浮き浮きして読む。

 カバーのキャッチコピーは以下の通り。

 「練馬署強行犯係、魚住久江、四十二歳。肩身の狭い喫煙者、自分的には独身貴族。不器用なオトナの新ヒロイン登場!」

 たまらないコピーに惹かれて相当の気負いを持って挑むと、何と、短編のシリーズである。この作者の短編はあまり心当たりがない。唯一の連作短編集が『ヒトリシズカ』だが、あれは全部合わせての長編作品みたいなものだ。最近『あなたの本』という短編集がようやく出たものの、こうしたしっかりした短編設定のシリーズというのが、今回、とても心憎い方式のように思われる。

 だって、海外の作家みたいだからだ。海外の有名どころのミステリ作家は、長編用主人公のほかに、短編用の主人公をよく作り出す。長編とは分けて、短編ならではの味わいをその主人公に持たせるのだ。無論、短編小説は難しい。わずかなページ数で読者をうならせる何かがなければ、そう簡単に用意できるものではない。

 誉田哲也という、最近になって映像化が目立ってきた作家にして、今、小説の作法としての基本を問われる短編集をこうして生み出してゆくことこそ、この作家の里程標(マイルストーン)になるのだろう。そんな重要な作品としてぼくは捉えたし、作品集はしっかりその重要性に応えているようにぼくは思う。

 何よりもこの女刑事の設定。存在感。リアリティ。時代を背景にしっかりと背負った、アラフォー刑事の孤独な生き様も然り、強行犯係にいる理由が、死んだ人間よりもこれから殺されるかもしれない人間の命を一つでも多く救うというところにある点も斬新かつ独自。この作家ならではの目の付け所が随所に生かされ、作品としても丁寧な仕上がりが好ましい。

 売れ始めた今だからこそ、誉田ワールドの足固めは必要である。そんな時期に相応しい一人のヒロインの造形を、ずっと追跡してやまないこの作家の将来性に向けて確実に受け止めてみたいと思う。

(2012.03.11)