夜も昼も




題名:夜も昼も
原題:Night And Day (2009)
作者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker
訳者:山本 博
発行:早川書房 2010.07.15 初版
価格:\2,000

 パーカーの訃報を聞いて以来、一冊もパーカー作品が読めなくなっていた。死後に翻訳された新刊が続々書店に顔を見せるたびに必ず手に取り買い込んで来たのだが、もうこれで終わりなのかと思うと、それらを読んでしまい、終わりにする気になれなかった。

 でもいつまでもくよくよ嘆いている場合ではない。一期一会だ。今、ここにある本を読まねば。今日は、躊躇う手を書棚に泳がせた結果、ついに一年も経ってようやくパーカーの作品に再会したのである。

 本書はジェッシー・ストーンのシリーズ。パラダイスという田舎の警察署長というシリーズでありながら、本書は驚いたことに事件らしき事件がなかなか出てこない。女子校の校長がスカートをまくって全員のパンティを検査したことによる騒動から始まって、娘が両親のスワッピングに悩んでいることを打ち明けに来たり、その一方で覗き魔が横行したりもするが、いつものように何かの強盗事件が起こるとか殺人事件が発生するということがまずないのである。

 今回のテーマはいずれにせよセックスがらみの問題ばかりがジェッシーの元に寄せられている。

 その中で、ジェッシーの元妻ジェンは、ふたたびジェッシーを捨てて、ニューヨークの仕事と新しい男に向かって去ってしまう。毎度毎度、妻となぜセックスだけを重ねていつまでも未練を残しているのだろうとこちらがいやになるほどのジェッシーの思い切りの悪さだったが、本書はこのシリーズ開始以来の大テーマにも大きな転換を迫ることになる。

 いや、むしろそのために精神の旅を繰り広げてきたジェッシーが本書においては最後の航海を行うことになるのであり、田舎町で起こる様々なできごとは、ジェッシーの心模様を明確に切り分けるための材料であるかのようにさえ見えてくる。

 男と女という問題、子供たちの問題、そして警察署長という職業の問題。それぞれの問題をジェッシーが整理し、解決してゆくことがこの作品の読みどころであって、下手に犯罪が起こるよりもよほど読み応えのある一冊となっている。

 どこまで混沌としてゆくのだと不安さえ覚える展開を見事にまとめ切り裁いてゆくジェッシーのデリケートな手腕こそが本書の読みどころであり、ラストシーンはまさに新たな旅立ちのように思える。さらに一作翻訳作を残しているので、これを読むのがまさしく楽しみだ。

(2011.05.09)