感染遊戯





題名:感染遊戯
作者:誉田哲也
発行:光文社 2011.03.25 初版
価格:\1,600


素晴らしい秀作である。3本の短篇+1本の中編で糾われるのだが、それぞれ独立した短篇として楽しめる作品たちを味わったあとに、さらに共通して残された謎としての中編が総括して解き明かすといういわばミステリの重箱のような構造が、優れて天才的なのだ。

 しかもこの一冊は姫川玲子シリーズの一環でありながら、当の姫川を差し置いて、彼女のシリーズ作品に関わってきた脇役たち、それでいていずれも癖の強い3人のデカたちを主人公に語られてゆく。これがなかなかに作者の筆圧を感じさせてくれる。いわゆる作者の意欲作であり、本シリーズにこだわる作家愛というあたりまで踏み込みたくなるほどのいい感じの本になっているのである。

 短篇それぞれが横山秀夫の境地に達しているし、長編として全体を捉えたとしても、軽く東野圭吾を凌駕しているのではないか。つまり、現代日本の警察ミステリを代表する技量ある作家たちのレベルに遂に到達してしまった感のある、これぞ誉田哲也の代表作と言いたいほどのいい出来なのである。

 今日はそういう意味ではドラマとノヴェルのせめぎ合いのようなものを感じつつ、ミステリが熟成され行く様にどきどきさせられた一日であったのだ。決して発熱の影響ではないと思いたい。

(2011.05.04)
最終更新:2013年01月26日 15:43