トゥルー・グリット




題名:トゥルー・グリット
原題:True Grit (1968)
作者:チャールズ・ポーティス Charles Portis
訳者:漆原敦子
発行:ハヤカワ文庫HM 2011.02.15 初版
価格:\720

 ぼくは少女小説もウエスタンも両方好きだが、少女を主人公にしたウエスタンがあるとはついぞ知らなかった。

 映画のいいところは、埋もれた作品が映画化され上映されるということになると、その原作小説などもしっかり書店に改めて並べてもらえることである。例え古臭い絶版本であろうとも。とりわけ、今をときめくコーエン兄弟などにより映画化されたりすれば、同じ復刊小説であっても、特等席に平積みされるようになる。なんとも有難い話だ。

 この映画は3月中旬に上映されたばかりなので、合わせて映画も見ればよかったのだが、いつもののんびりさが祟って、今頃のチェックとなり、DVD化には少し時間を待つしかない、まさにタイミングを外した読書となってしまった。

 にも関わらず、ぼくはこの小説に興奮を覚えた。かつての西部劇映画としてジョン・ウェインが主演して原作とかけ離れたヒーロー・ウエスタンに変えてしまった『勇気ある追跡』は、原作そのままのタイトル『トゥルー・グリット』でコーエン兄弟の手によりまさに原作に忠実な映画として作りかえられたらしいのだ。

 コーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』も『ノー・カントリー』という原題そのままにまさに原作どおりにコーエン兄弟はなぞってくれた。小説の静寂や間をコーエン兄弟は映画でも尊重してくれる。ジョン・ウェインの醸し出すアメリカ男の強さなどは、不要なのだ。

 主人公の少女は父を殺され、ガンマンを雇って復讐の旅に出る。ガンマンを雇う、というと語弊があろう。何しろガンマン連邦保安官補なのだし、これに同行するテキサス・レインジャーと合わせて公務員なのだから。この二人をジェフ・ブリッジスとマット・デイモンが演じるのだろう。取り合わせが楽しそうだし、小説を読む間、顔をこの二人の役者に想定して読んでしまった。

 しかし面白いのは、この二人が無鉄砲で、喧嘩ばかりしているのに比して、我らが11歳の少女マッティ・ロスは原題の日本にいても通用しそうなほど、世情に強く、賢く、世間のシステムに詳しい、ゆえに、三人のチームの中で最も頼もしいのである。

 のっそりと始まる物語は、ロード・ノベルの様相を呈し、アメリカ西部の美しくも厳しい自然を移動してゆく。馬は疲弊し、彼らはキャンプして焚き火して水を汲み、ベーコンを焼いて、コーヒーで飲み下す。こんな過酷な旅をするだけでも少女には十分きついのに、彼女は敵と闘わねばならないのだ。

 ラスト、思いのほか過激な死闘が繰り広げられ、彼女も試練を経験する。ここまで厳しい小説であったかと思われるほどに、ウエスタンは、甘さを排除し、少女の大西部に生きる意志の強さwと逞しさを描き切る。媚びなく、へつらわず、譲歩せず、ストレートに。だからこそ、この原作は二度も映画化されることになったのだろう。傑作、の名が相応しい古く懐かしい大西部少女冒険小説であるのだ。 

(2011.05.01)