ひかりの剣






題名:ひかりの剣
作者:海堂 尊
発行:宝島社 2009.09.24 初版
価格:\1,429

 いきなり青春剣道小説とは、これびっくり。誉田哲也『武士道シックスティーン』に影響された? まさかね。でもぼくはなぜか、ものすごく知らないスポーツである剣道の小説をなぜか立て続けに読まされていることになる。大好きなサッカーの小説ではなくて。サッカーの小説なんて本当にないからだ。

 ちなみに作者には二つのモチーフがあったのだろうな。一つはシリーズの屋台骨を構成するキャラクターを時を移し舞台を移し書いてみることで、その相対的構図、全体的配置を明らかにする。剣道という団体競技はそれらを整理するのに、ちょうどよいように思える。そして戦いを通じてその個性をさらに明らかにし、かつ深く掘り下げる。

 後々もシリーズの中でキャラクターに個性的に動いてもらうことは大切なことだろうから、医療現場のみならず、こうした青春剣道小説の中でシミュレーションしてみることも選択の範囲としたのだろうな。

 もう一つはきっと熱血スポ根小説を書きたかったのではないだろうか。医療ネタを常々練っているなかで、きっと好きなんだろう剣道をネタに、思い切り羽を伸ばしてみたかったんではないかと想像する。あるいは編集者がこんなことを囁いたのではないだろうか。

 ねえ、海堂先生って、剣道やってたんでしょう。誉田先生もほら本職は刑事ミステリなのに青春剣道女子小説で本職以上に売れてしまって、映画化までされちゃったじゃないですか、あの剣道ブームにあやかって、ひとつ東城大対帝華大みたいな構図で剣道の試合をメインにした昔懐かしいスポ根ものなどを書いてみてはいかがでしょうか?

 正直気が進まなかったし、読んでみても、まあだいたい予想通りの結果だったので、どうにもならないのだが、作者の(編集者のかも)きまぐれにお付き合いするのは読者としての義務かと思って読んだ次第。可もなく不可もなく、である。  なぜハードカバーで買ったりしたんだろう? とか後悔したりするのは、この作家に対するニーズがまるで違うからだろうね。……ったく。

 ※ちなみにこの感想を書いている現在では既に文庫版が出ています。さらに激しく後悔!

(2011/01/24)