フランキー・マシーンの冬





題名:フランキー・マシーンの冬 上/下
原題The Winter of Frankie Nachiene (2006)
作者:ドン・ウィンズロウ Don Winslow
訳者:東江一紀
発行:角川文庫 2010.09.25 初版
価格:各\743

 ウィンズロウである。いかにもウィンズロウであるなあ。うーん、と唸りたくもなるのだ。

 『犬の力』から一年、あの超大作の馬力と迫力をそのままに、今度は凄腕の老マフィア最後の戦いを綴った傑作を書いてしまった。『犬の力』の半分くらいの長さの作品だけど、作者アベレージで言うとこれも大作の部類に入ると思う。それとも未訳の新作はみんな厚めに書いているのかな? そのあたりは不明。

 最初は何も始まらず、事件らしい事件もなく、引退した老マフィアのまるで機会のように規則正しい生活のリズムそのものが描かれる。なんだ、これは? って拍子抜けしたくなるくらい平和な日々。しかも老いてもサーファーなのだ。でかい波を求めて日々海へ出かける。もうこうなった時点でウィンズロウ・ワールドだな。

 複雑な事情にあるらしい家族関係が描かれる。妻とは別居し、恋人と愛し合っているが、娘を挟んで妻とはブランチを食べたりする。娘には眼がないし、いいパパである。恋人からも生ごみ処理器の修理依頼の連絡が入る。彼女にとってもいい恋人であるらしい。誰にとってもいい人。それでいて伝説のマフィア。名うてのヒットマンとの経歴を持つのがフランキー・マシアーノ。冷徹に機会のように事を成すことからマシーンの異名を持つ。なるほど。

 そのヒットマンにも修行時代はあった。ニール・ケアリーと同じだ、もちろん。違うのは血で血を洗う少年時代、本物の殺しのシーンを見せつけられながらマフィアのOJTをやむなく仕込まれて育ったという経歴だ。第一マシーンの方はスパイではなくヤクザだ。

 彼は、そうした経歴も祟って、徐々に怪しげな謀略に巻き込まれてゆく。疑いを持たれ追われる。追われながら追撃する相手を見定めてゆく。暗闘、って奴だ。連続する暗闘。汚い手も使い、使われる。家族を巻き込んだ手だ。若いポップなマフィアが敵さんのジュニア世代。ゴッドファーザーの映画などでは見かけない世代だ。いまどきのマフィア小説。

 ラストはやっぱり凄惨な決闘シーンで盛り上がる。複雑化したウェスタンのようなものだ。やはりサム・ペキンパに撮らせたい原作だ。サムは生きちゃいないけれども。

 皆して天国へ行ってからサムによって映画されたフランキー・マシーンを観た方がいいのかもしれない。天国へ行ってでも見れたらいい、と思ういい作品だからだ。

(2011/01/22)