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夜行観覧車




題名:夜行観覧車
作者:湊かなえ
発行:双葉社 2010.6.6 初版
価格:\1,500

 事前に、湊かなえが、メディアで、或る程度ストーリーをかたっちゃっているのをご存知だろうか? ミステリなのに。信じられない。

殺人者がいる一方で、殺人を思いとどまる普通の人は、世の中にいっぱいいる。殺人を犯してしまった人と、殺宗とは思ったけれどそうはしなかった人の差は、もしかしたらわずかかもしれない。しかしそこに立ちはだかる壁の存在がその後の本人や家族の運命を決定付けてしまう。

またある人の殺人を止めようとする助力者の存在によって、殺人者にならずに済んだという多くの人が存在するに違いない。本書では、だから******(ネタバレ)のケースを書きました、って作者本人が言っちゃってるのだ。そりゃない!

 まさに作品のクライマックスに当たる部分で、登場人物が語るのが上のような言葉なのに、それをメディアで(TVだったか活字だったか、覚えていないけれど多分新聞)作者自身が喋ってしまっており、それをぼくは先に見ちゃった。なので、結末をある程度知りながら、読んでいるのだ。

 物語は二つの家族を軸に描いてゆく。一方はリスキーで一触即発で崩壊しそうな家庭内暴力にさらされた家族。一方は、殺人事件の渦中に巻き込まれてしまった家族。厳密にはそれを見つめる狂言回しのようなオババが出てくるのだが、この三軒の家というトリオが三拍子でワルツを奏でる。坂の上の山の手の住宅街を舞台にして、観覧車のように回ってゆくストーリーなのである。

 本書は、読み始めたら多分止まらない緊張感がある。その中で、やっぱり女性作家の視点になるミステリと思われる部分が本当に多い。マイホーム、山の上と下の貧富差(黒沢映画『天国と地獄』みたいに)、友達や同僚らとの微妙な会話。家族、親子、夫婦、などなど。高次元の話題など、作者には一切眼中になく、何となくリアルで現実的な等身大の世界を行き来するからこその怖さ。女性的なリアルな視点であり、それゆえの怖さがある。

 ここのところ、湊かなえは、面白い、つまらない、面白い、つまらない、の順番で本を出しているような気がする。『Nのために』はつまらなかった。だから本書は、とても面白かった。

 ネタバレがなければ、明らかにもっと楽しめたのに。

(2010.07.13)