主よ、永遠の休息を




題名:主よ、永遠の休息を
作者:誉田哲也
発行:実業之日本社 2010.3.25 初版
価格:\1,600

 休むひまもなく作品を書き続ける人気作家の本音? と思わせるような、あまりピンと来ないタイトルだが、内容は、人気作家ならではの現代的犯罪ネタを基調とし、よくこなれたクライム・ノヴェルである。

 一方で警察詰めの若手記者の視点から、もう一方で都会のコンビニに働く地味目な若い女性の視点から、どちらも得意の一人称を駆使して物語を綴ってゆく。

 深夜のコンビニ強盗捕獲事件をきっかけに、この作品の重要な登場人物たちは一同に出会う。もちろんその偶然を理解するのは、本人たちも、読者の側も、ずっと後になってからのことなのだけれど。

 次第に明らかにされるのは、過去に起こった幼女殺害事件の真実である。その際の容疑者(山ほどのビデオを集める猟奇殺人鬼として宮崎事件を一部モデルにしているようだ)は、心神耗弱を理由に無罪となっており、今また牙を剥こうとしている。

 一方、事件当時の容疑者によって録画されていた幼女暴行の映像が、裏ネットで流されているとの噂が流れ、その供給元である組事務所は、謎の侵入者により荒らされる。

 そうした不穏な空気の中、主人公の女性は心身の不調に悩まされる。途切れている幼女時代の記憶。事件では被害者となった親友の薄れた記憶。突然の、恐怖と吐き気の発作にたびたび見舞われる彼女の真実とは?

 二人の主人公が、徐々に距離を縮めて接近し一つの物語の真実に向けて収斂してゆく経緯こそが、この作品の読みどころである。恋愛小説的流れに重なる暗いサスペンスフルな宿命が痛々しい。

 誉田流サイコ・サスペンスの容赦なさは、本編でも十分に描かれる。類型的な犯罪者よりも、どちらかと言えば、被害者やその家族の側が受ける、逃れようのない悲劇を描き切った重厚な後味の作品であると思う。

(2010.05.08)