欧亜純白 ユーラシア・ホワイト





題名:欧亜純白 ユーラシア・ホワイト I/II
作者:大沢在昌
発行:集英社 2009.12.20 初版
価格:各\1,700

大沢作品の中で最も長い作品らしいが、これほどの長さが必要な作品であるようには思えない。基本は国際麻薬戦争を舞台にした活劇なんだけれど、麻薬事情をキャラたちに語らせてそれで終わりかい、っていう小説に過ぎなく、そのための長さかよ、ぶーーー! と思わずブーイングしたくなる凡作であった。

 通勤時間帯でしかほぼ本を読むことのできない生活の中で、ページ数というのは非常に読書スピードの不可要素となるのだが、それがぎっしり詰まってのものであれば文句はない。だけど、本書みたいなB級な展開が延々長いだけというのも、やはり何だかなあ、という気がしてしまう。

 1999年に連載が終っているのに、ハードカバー化に10年もかかるというのは、現代日本の出版事情から見るととっても考えにくいことである。大沢という売れっ子作家の大作でありながら、これほどハードカバー化を出版社に躊躇わせる何かがあったということを考えると、やはりその核には、この本の面白くない要素がありあまる程あったということではないのだろうか。

 今週は中国に覚醒剤を持ち込んだ日本人の死刑が話題になったのだが、この小説にはアヘン戦争以来の中国のドラッグに対するトラウマについてもしっかり解説されている。そういう時事問題の解説本を読まされているような気分に全編を通していざなわれるような変てこな小説である。情報小説、っていう分野だけはちょいと勘弁してほしいのだけれどなあ。

(2010.4.11)
最終更新:2010年04月11日 22:15