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罪深き海辺




題名:罪深き海辺
作者:大沢在昌
発行:毎日新聞社 2009.07.25 初版
価格:\1,700

 二つの勢力が対立する地方の閉ざされた町に不意に現われる流れ者。彼が現われた時にすべてが動き出す。

この手の設定ときたら、黒沢明監督『用心棒』であり、ハメットの『赤い収穫(血の収穫)』であり、もちろんクリント・イーストウッドを一躍世界的スターにしたセルジオ・レオーネの黒沢リメイク『荒野の用心棒』であったのだ。

 そんな世界に、作家なら誰もが挑みたいのかもしれない。かつて船戸与一が『山猫の夏』で挑んだように、冒険小説の最早大家と言っていいだろう、大沢が挑んだのである。

 日本の田舎町ならではの空気が濃厚に出ているが、ちと複雑に絡み合うストーリーを追いすぎたのか、この人の欠点である旅情とか叙情というものの欠如がやはり目立つ感じがした。シミタツあたりがこれを書いてしまうと凄みが出るのだろうけれど、天はそう簡単に作家たちにもニ物を与えない。

 モデルとなった海辺の田舎町に全くそぐわないマリーナやリゾートホテルやらに群がる開発業者たち。地元ヤクザと町の有力者たちの暗躍。9年前から現在に至る不振な死の歴史の真相が解き放たれるのは今なのか。アメリカからやってきたわれらが謎の風来坊。彼はこの澱んだ町にどんな波紋を巻き起こすのか。

 都会派ハードボイルドの旗手との印象高い大沢としては、とても珍しいタイプの地方都市サスペンス。伝奇小説とまでは現実から離れてゆかないあたりで踏みとどまるところか本書の味噌かもしれない。

(2010.1.24)