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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。




題名:ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。
作者:辻村深月
発行:講談社 2009.09.14 初版
価格:\1,600

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』。なんていう謎めいたタイトルだろうと。しかし、とにかくいい小説である。最初はどういう作家なのかわからないだけに戸惑うところもあったのだが、母を殺し逃げている女性を、かつての親友が探す、というハードボイルド構成でありながら、探すというよりも、インタビュー小説のように、現代の女性の総論のようなところに向って行きそうなディテールの多さに、やや戸惑いを感じる。

 しかし、巻半ばくらいから、この物語の持つ奥行き、その手の届かない場所に蹲る深い闇のようなものに気づき始め、その辺りからは、逃亡者も、探索者も、揃って自分の中心に過去というのっぴきならない宿命を抱え込んでいることが明らかになってゆく。

 第二章は、逃亡者側の側の視点で描かれており、その中でもとても印象的な新しい女性が登場する。様々な女性たちの出現により、ヒロイン二人を取り巻く、友人たちの環境、母との正常ならざる関係といったものが浮き彫りにされてゆく。ラストの数ページになると、シーンとしてとても感動的なクライマックスが複数箇所あるので、読者としてのこちらは動揺する。

 作家として知らないばかりでなく、何が書かれようとしているのか想像しにくい展開であるだけに、その動揺は意外に激しかった。今さらながらこの本を出版社より寄贈して頂きながら、このミス投票に間に合わせなかった我が読書スケジュールが呪わしい。出版社もよほどの自信作だったのだろう。締め切り前に読んでいれば、間違いなくランクインさせていただろう。29歳の女性作家という既成概念だけではとても侮れない才能を、容赦なく感じさせられてしまった。

(2009/11/15)