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混濁の夏 デルーカの事件簿 2




題名:混濁の夏 デルーカの事件簿 II
原題:L'estate torbida (1991)
作者:カルロ・ルカレッリ Carlo Lucarelli
訳者:菅谷 誠
発行:柏櫓舎 2005.3.30 初版
価格:\1,429


 『白紙委任状』に続く三部作の二作目。1月、3月、5月と二カ月おきに柏櫓舎より出版予定なのは、本編が二百ページに満たない中編作品であるためなのか、あるいは疾走するような1940年代のイタリアの現代史を連続的に読んでゆくための版元・訳者らの意図なのか。いずれにせよテンポとしてちょうど良い。

 前作で、連合軍によるファシスト共和国侵攻をクライマックスに迎え、逃げ出した捜査隊長デルーカは、本作では国を挙げての完全なる逆境に置かれる。前作では相当のポーカーフェイスだった我らが主人公は、戦犯として捉えられ、処刑されることを恐れ、名を偽り、逃亡生活に身を窶す。

 そんな彼に話を持ちかけたのが、何と追手であるパルチザンの警察官。山を下り、戦後の生活として警察を選び、難事件に困惑する彼が、デルーカの力を借り、解決に向かおうというもの。相変わらず、あまりに強烈過ぎるエポックを背景にしつつも、作品はミステリであることをやめようとしない。

 前作にない逃亡者としての恐怖をスリリングに盛り込みながら、パルチザンの猛者を敵役に、捜査小説というよりも、ノワールの香りさえ漂わせつつ、物語はバイオレンスの渦中へ飛び込んでゆく。

 前作以上に、気になるエンディングで本書は閉じられる。独立しているようでいて、時代の流れを追って書かれた本シリーズ、5月に発売される3作目『オーケ通り』で再会するであろうデルーカの、そのときの状況がどのように激変しているのか、これまた見ものだ。

 イタリアの戦争直後の歴史にミステリが重なって独特の味を醸し出す、現在のところ日本では唯一無二の<マカロニ・ノワール>と言っていいだろう。

(2005.04.10)