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過ぎ去りし日々


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題名:過ぎ去りし日々
原題:All Our Yesterdays (1994)
作者:Robert B. Parker
訳者:菊池光
発行:早川書房 1995.17.31 初版
価格:\2,200

 スペンサー・シリーズは『儀式』までしか読んでいない。シリーズものというのは、いったん読みやめてしまうとなかなか再開できないもので、たまにこうしたシリーズ外作品でもないことには作者に再び出くわすということはなかなかないものだ。

 そして正直言って、スペンサーとは遠いところにあるこの作品を読み終えて、作品がいとおしくさえなってしまったのは、この作品の価値であり力であると思う。批評を許さぬような、感情に直接訴える何かをこの作家は持っているのだとぼくは確信した。

 内容はエルロイのLAシリーズのようでありながら、饒舌でイメージの豊かなエルロイに対し、寡黙で、行間を味わえるようなまるで日本作家みたいなパーカーを感じてしまった。この不器用さがパーカー・ファンを逆に惹きつけているのかもしれないね。

 それにパーカーがこんなにもアイリッシュの血を濃く絞り出してみたことは当然初めてだと思うし、本当にヒギンズで馴染んでいたアイリッシュのケルト的な燃える血、女性たちのすべてをゆだねているが如きカトリックへの犠牲的な信仰心、雨や雪の似合う北方的な情感……といったものをパーカーの作品でこうして味わえるとはぼくは思っていなかった。

 そういう意味でアメリカ的だとばかりおもっていたパーカーの、ルーツとでもいうべきか、北海の重みをもったがごときこの作品は、ひたすら感動的だったし、ぼくを釘付けにした。今さらながら激戦の年だったとはいえ『このミス』で選ばなかったのが悔やまれます。

 これを機にシリーズ読書を再開させようかとひそかに思っていたりする……

(1995/12/16)