怪物 -アゴタ・クリストフ戯曲集-



題名:怪物 -アゴタ・クリストフ戯曲集-
原題:MONSTRE, ET AUTRES PIECE (1972-1982)
作者:AGOTA KRISTOF
訳者:堀茂樹
発行:早川書房 1994.7.15 初版 1994.10.31 3版
価格:\1,600(本体\1,553)

 『悪童日記』以前、 10~20 年以上も前に書かれた中から五篇を選んで出版された戯曲集、ということで、アゴタ・ファンならかなり興味を惹かれる作品集である。

 やはりこの人の世界は独自だと言わねばならない。どの戯曲を取っても陳腐なものは一切なく非常にオリジナルでユニークな着想に溢れていて、あの独特の恐怖感、存在への不安定感みたいなものが共通して流れている。当然『悪童日記』につながるあの世界への扉である。

 SF的な作品、未来は道路だけで成り立っていてそこを人はどんどん行き過ぎる。寸劇を蓄積したような作品『道路』を初め、奇妙で独自性に富んだ極めてすぐれものの芝居であると思う。

 自分自身は芝居にはあまり関わりがないのだが、この人の芝居を演じようと言う時には、まず背景や大道具、小道具の類が不要であろうと感じる。殺伐としたむき出しのコンクリートを背景にして、あらゆる道具を排したところで、この作品群が持つ、セリフだけの芝居というので、十分であろうと思う。それほど端的にいろいろなものを揺さぶるセリフに、この戯曲集は充ち溢れているからだ。

(1994.11.27)