勇者の代償



題名:勇者の代償
原題:TOLL FOR THE BRAVE (1971)
作者:JACK HIGGINS
訳者:小林理子
発行:創元ノヴェルズ 1992.1.31 初版
価格:\430(\本体417)

 『地獄島の要塞』『非情の日』の間に書かれた作品とあって期待したのだが、ヒギンズの比較的収穫の多いとされるこの時期の作品ながら、本書は同時期の作品としては実験的であり過ぎ、特に、西洋人が書くと必ず東洋への不理解が前面に出てしまうという東洋拳法(カンフーアクション)ものということもあって、いささか情けない作品になっている。

 先日RT(チャット)で単細胞さんと話した折り、次のようになったのだが、

   シュン「『勇者の代償』は?」
   単細胞「本屋でぱらぱらとやってパス」
   シュン「『イグナシオ』は?」
   単細胞「本屋でぱらぱらとやってパス」

 さすが速読のできる単さんはお得な性格というか……(^^;)(^^;)

 さてそれでも出る本は全部読まねば気が済まないのがヒギンズ・マニアであるからこれも読んだ。一人称でのベトナム・ストーリー。前半はほとんど戦地での捕虜体験とトラウマの大きさを語ることで費やされている。後半は、まあベトナムと言うより中国共産スパイが、イギリス静養中の主人公を襲うという場面で悪夢が再現する。まあまあの面白さはあるのだが、全体に小ぶりで、いつもの男の生きざまと言うよりは、「運命の悲劇」とか「だれも信用できない世界の非情さ」みたいなものをメインに持って行っているため、およそヒギンズらしからぬ物語なのである。珍しく濡れ場も多いし、ほんとにこれヒギンズの作品なの? と思ったくらい。

 やはり、本というのは本屋でぱらぱらとチェックしたほうがいいかもしれない。しかしヒギンズ・ファンはヒギンズの多作という病気から来るこうした「作品の谷間」にもしっかりつきあう義務があるのではないでしょうか?(^^;) ううう、苦しい(^^;)

(1992.02.07)