貧血症気味の薔薇
題名:貧血症気味の薔薇
作者:真崎建三
発行:講談社 1996.6.14 初刷
価格:\2,200
帯には大沢在昌の評。絶賛となっていないところが奥ゆかしいのだが(^^;)、『天使の牙』のような半分強引な掟破りのSF技を使う作家だから、この作品の評者に選ばれたのかもしれない。
というわけで、この作品はリアルな部分のほとんどない、現代の都会の吸血鬼ものである。けどそれなりに面白く一気読みしてしまうのは、文体の劇画調の読みやすさ、と徹底した娯楽性からであろう。お世辞にも名作やベストテン入りはしないであろう本だけど、たまにはこういうジェットコースター・ノベルで脳味噌の皺を伸ばすというのもいいか。
ローカルな映画館で二本立てのロードショーに付いてくるスーパーB級パンク映画、あるいはレンタル・ビデオ専用の国産新人監督起用映画(やはりB級)……という印象がかなり強く、全体的にもぼんやりしたフィルターのかかった映像を見ているような錯覚に陥る。異世界小説である。
ストーリー展開どうのこのと言うよりは、このちょっとしたトリップ感覚を楽しむべき一冊であるのかもしれない。
(1996.07.07)
最終更新:2008年03月20日 15:19