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クーデター







題名:クーデター
作者:楡 周平
発行:宝島社 1997.2.中旬予定
価格:予価\1,800

 前作『Cの福音』でこき下ろした作家楡周平の発行前のワープロ打ち第一稿を、簡易印刷したもの。こういう代物が宝島社から届きましたので、早速読んでみました。前作に比べて時間も労力も費やしているらしく、とってもボリュームもある本なんだけど、評価は、悪いが前作と同じ。

 内容ですが、日本のある新興宗教団体がが武器買い付けをして、能登の原発付近や都内の重点区域で軍事行動を起こすと言うもの。これのディテールを時系列に沿ってだらだらと、特定の主人公を置くでもなく、実にクールに計算式でも書くかのように、それでいて形だけは気障に気障にどうだ小説として格好いいだろうと言わんばかりにまとめている。そういう無気味なシロモノである。

 だらだらと説明の多い描写が続くわりには人間なぞ一人も出て来ないと言って過言ではない、それほどいい加減な扱い。ぼくは仮想戦記小説というのは読んだことがないけれど、きっと出来の悪いB級仮想戦記なんかは、こういう感じなのかなと思わせるほど、人間不在のオタク作品である。

 前作で感じられた大薮春彦かぶれは取れたみたいだけど、自分は現実を認識しているんだぞお、と言わんばかりの勘違いを続けているのはそのままで、国際社会へのうすっぺらい認識と基本的に勧善懲悪である構成のちゃちさに、空いた口が塞がらない。これほどひどい作者の前作が20万部も売れたって言うのは、どういうわけだろう? 日本人にとって読書っていったい何なんだ、本当に?

 まさにいろいろなことを考えさせられる小説です。ぼくはこういうのは前作ともども小説として認めません(キッパリ)。ぜひ出版の暁には皆様も読んで、日本のベストセラーという巨大な深淵に迫ってみてください(^^;)

 ちなみに作中のわけ知り顔の人物が「日本は単一民族国家」と言い、日本の危機管理がそのためになっていないなどの作者の主張がその後も何となく見え隠れする。首相時代の中曽根があれほど抗議を受けたのに、今さら「単一民族国家」などと考える文化人(なのか?)が、まだ大きな顔をして存在することに呆れる。船戸与一『蝦夷地別件』でも読んで、歴史の勉強の一助としてもらいたいものである。というわけでこの点は版元に抗議ファックスを送っておきました。こんなバカ本をそのまま出すんじゃないぞお。と、本気でそう思ったんで。

(1996.12.23)