平成悪党伝



題名:平成悪党伝
作者:谷甲州
発行:徳間ノベルズ 1995.6.30 初版
価格:\780(本体\757)

 うう、『凍樹の森』は良かったんだが、これはぼくにはダメだったんだろうか。読んでから二ヶ月ほど寝かせておいたらストーリーそのものを忘れてしまった(^^;)これでは感想を書けない。

 というわけでぱらぱらやってみると、一人の反抗的社員が自堕落な生活をしているところへ、あるヤクザとの出会い、預けられた拳銃・・・・という個人的な環境の変化がある。一方、彼の建設会社が疑惑の談合、黒幕としての暴力団、大手ゼネコンの影・・・・とそれなりにタイムリーな謀略の構図を描いている。さて谷甲州描くところの一匹狼の主人公は、どう出るか? といった小説かな。

 でも如何せん、谷甲州の小説でありながらその中身や印象すら覚えていないほどですから、その程度のものであったのだろうとしか、今のぼくには言えません。

 小説としての基本技術、文章の熟成度などはそれなりに谷甲州の作品に感じるものなのだけど、ある意味でいろいろな本を書きすぎるきらいが否めない。この人が軽く書くタイプではないなと感じるだけに、本書などでも、きちんとページを費やしてそれなりに練られれば大きく違った結果となった気がしてならない。

 でもやはり会社という組織に属する人間としては、こういう結末は半端でいやなのだなあ、ぼくは。できるならもっと野性的に!

(1995.08.09)
最終更新:2008年03月05日 22:00