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冷たい銃声




題名:冷たい銃声
原題:Cold Service (2005)
作者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker
訳者:菊池 光
発行:早川書房 2005.12.15 初版
価格:\1,900

 アメリカが銃による解決という方法をやめることがない限り、私立探偵のシリーズのどこかで、私立探偵、もしくは関係者の誰かが、ある日、撃たれて死ぬ、あるいは負傷するということはあるわけで、ロングセラーのシリーズになれば、大抵誰かがいつかどこかで撃たれることになることも決して不自然なことではない。むしろこの衝撃を題材にして、作家は一巻を華々しく綴ることができるし、読者にとってみれば、それなりに話題となりやすい。言わば、誰かが撃たれる作品は、シリーズの花、アクセント、刺激である。

 87分署ではスティーヴ・キャレラ刑事がシリーズ三作目の『麻薬密売人』で、撃たれたのだが、作家はこの刑事を作中で殺そうとし、編集人がそれを止めたのである。代わりに、87分署シリーズ5作目『被害者の顔』でR・Hが、『死に様を見ろ』ではF・Fが、いずれもレギュラーでありながら死んでゆく。

 刑事ドラマ『太陽に吼えろ」は殉職死がそのままシリーズのハイライトであった。

 本シリーズでは、『虚空』でフランク・ベルソン刑事が撃たれ、『悪党』でスペンサー自らが撃たれているから、ホークが撃たれるところから始まる本書は、シリーズ中何と三番目だ。そのくせ誰も死なないあたりが、シリーズ・キャラクターに優しい(甘すぎる?)パーカーらしいところなのかもしれない。

 ホークに勝るとも劣らない冷血なプロであり、スペンサーを撃った男グレイマンが再登場するところは、さらなるサービスかもしれない。

 ウクライナという国が世界で最も注目されたのは、1996年、サッカー、ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグで、ディナモキエフの快足フォワード・シェフチェンコがリーグ得点王を掻っ攫ってACミラン入りを果たしたときではないだろうか。その後アメリカ小説でウクライナという国名を見ることはあまりなかったのだが、本書では珍しい敵手たちが登場する。

 ウクライナからやってきた名前さえ難しくて覚えにくい殺し屋たちが、スペンサーのボストン(あるいは隣町なのか?)にやってきたのだ。ホークを撃った異人(エトランジェ)たちだ。

 こういう具合に。何もかもが、どことなくサービス精神に満ち溢れている。そのくせ活劇は淡々と、あっけなく。スーザンは、別のシリーズでサニー・ランドルのカンファレンスを担当していることなどおくびにも出さすに、スペンサーの報告を聞き、ホークがどんな男であるのか、その存在理由(レゾン・デートル)を二人で読者のために説明し合っている。

 仕掛けがわかりやすいのにも関わらず、その徹底したサービス振りに溺れてしまう。抵抗し難い読み心地のよさこそが、最近のこのシリーズの売り、だと言っていいのかもしれない。

(2006/01/29)