ポットショットの銃弾




題名:ポットショットの銃弾
原題:Potshot (2001)
著者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker
訳者:菊池 光
発行:早川書房 2001.7.15 初版
価格:\1,900

 年一冊のペースで快調に連続するシリーズ。その質の維持をどうやってクリアしてゆくか、あるいは読者の興味をどれだけ連続して引きずってゆくか? ベストセラー作家の命題であるとともに、目立ち、読みやすいゆえに立たされる矢面の中、もはや巨匠と言えるこの作家は、シリーズのメリハリを一つの方法論として用い始めているのだと思う。

 シリーズだけではなく、ニューシリーズもノンシリーズもラッシュの作家と言えるロバート・B・パーカー。ぼくがいつの頃からかイージーリーディングと読んでいる軽い読み口の小説を、今ではもはや短いと言える長編ジャンルを頑に守り続けるスタイルを、ぼくは最早習慣的に読み続けている。裏切られることのないスピーディでライトな展開。ストロングスタイルを誇示するレスラーのように、銃を装着したガンマンたちが、よその町に出かけてゆく。引き連れるのが我らがスペンサー。

 このシンプル際まりない小説のスタイルの名を娯楽と言い、公園の遊具で遊ぶ子どもたちのように、ぼくらはそれにつかまり、あらゆるところをいじりまわして、家に帰ってゆく。リアルと与太話の混在した世界。もしかしたらこれがリアル・アメリカなのかもしれない。

 美味しいビールでも呑みながら、夏の夕暮れにスペンサーシリーズを開いていると、ガンマンたちの闘いが燻らせる硝煙の匂いが、心の中に美味しいビートの香りとともに広がってゆく。夏に出る新刊を、いつも暑さが去らないうちに読む。それがぼくの夏のある一日の楽しみであったりする。
最終更新:2006年12月10日 21:11