捜査官ガラーノ


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題名:捜査官ガラーノ
原題:At Risk (2006)
作者:パトリシア・コーンウェル Patricia Cornwell
訳者:相原真理子
発行:講談社文庫 2007.08.10 初版
価格:\619



 パトリシア・コーンウェルの小説にしては薄い本だ、という第一印象。巻末の訳者解説によれば、ニューヨーク・タイムズ・マガジン(という雑誌がタイムズ日曜版別冊として存在するのだそうだ)への3ヶ月ほど短期連載されたそうだ。同じ文芸欄にはマイクル・コナリーや、スコット・トゥローなどの重鎮も名を連ねているとのことで、同じコンパクト・サイズの作品を、これらいずれも長編作家たちが珍しく書いているのだと思えば、どれも読んでみたい、という好奇心が疼く。

 さて、どちらかと言えば、サブ・ストーリーとしてのホーム・ドラマやラブ・ロマンスにも力を入れ、メインストーリ-を食ってしまう傾向が、検視官シリーズにはあるのだが、本書は、さすがコンパクト・ミステリーだけに、そういった背景描写はキャラクターの個性を浮き立たせる素材としての描写にとどめ、ヒーローである捜査官ガラーノと、癖のある脇役たちとのラブ・ロマンスを思わせる駆け引きについても、ほんのおさわりだけ、というように見える。

 つまり、これは事件を追いかけるガラーノのシリーズ小説というよりも、事件そのものの複雑な背景と意外性のある黒幕を暴いてゆく純然たるミステリー小説の色合いが濃いのである。それだけに、いつもの検視官シリーズよりも凝りに凝った犯罪であるかに見える。

 しかしこの作者の弱点である、大風呂敷を広げるのだが慌てて畳んでしまうというバランスの悪さみたいなものはこの作品でも見られるので、結局のところ、途中までは面白いのに、結末の爽快感が今ひとつ足りないのである。つまり謎めいた事象が多すぎるため、それのどれもに回答が与えられたという満足感が最後まで得られない。喉に何かが引っかかった感覚が残ってしまうのだ。

 懲りすぎるミステリーにはしばしばそうした終焉傾向が見られるのだが、この程度のコンパクトな、中編と言ってもよさそうな作品には少し不釣合いという印象が拭えない。

 帯には「新シリーズの第一弾」とあるが、解説では「まだ確定ではないが、本作がシリーズ化されるという噂もある」にとどまる。とすれば、帯は現状では誇大広告ではないのか? ともあれ、しっかりとページ数を与えられた長編小説としてケイ・スカーペッタ以外のヒーロー小説がこの作家に期待されているのも確かだと思う。期待は持ちたいと思う。

(2007/12/30)