こらっ





題名:こらっ
作者:中島らも
発行:集英社文庫 1994.2.25 初刷
価格:\420(本体\408)



 こういう本を読むと中島らもって人はただただ半生を酔っ払って過ごしてきたのではないのだなあ、と知れる。まあ、そういう意味では比較的真面目に世間を怒り、世間のばかばかしい事どもに対し、身をよじっている本である。面白さを期待して読むと、ちと当てがはずれる小エッセイ集。

 地方行政を叱る章などは、何に連載されたものか知らないが、なんだかやけによく調べ、やけによくその時事問題に対し真正面から語っていたりして、「明るい悩み相談室」のような気楽さはあまり見られなかったりもする。

 ぼくとほぼ同世代に属するこの中島らもという人のいいところは、すべてに対する飽くなき興味と意外に冷静な分析心。だからかなりニュートラルな感覚でさまざまなジャンルのさまざまな世代の人を観察している印象があるのだな。偏見ということからもっとも遠いところに立とうという姿勢がこの人の文章を支えている。でも意外とこういう人こそ文章から離れると頑固者なのだろうなあ、と想像できたりするところも楽しかったりするのだ。

(1994.11.11)
最終更新:2007年12月15日 22:43