愛をひっかけるための釘


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題名:愛をひっかけるための釘
作者:中島らも
発行:集英社文庫 1995.7.25 初版
価格:\380(本体\369)




 中島らもはテレビで見るとただの関西人なんで、めちゃくちゃ面白い人だけど、やはりこの人の中には底知れぬ闇があると思うのである。底知れぬ闇は時には『人体模型の夜』『白いメリーさん』のような恐怖小説のかたちを取って、時には『ガダラの豚』のような悪魔的な破壊小説のかたちを取って、そしてときには『今夜すべてのバーで』のごときリアルな肉体的恐怖を伴って、常に死に近いところに彼を立たせているみたいだ。

 その常闇の力が、あるときはひきつるような笑いを生み、あるときは虚しいほどに笑いを掘削して行ったりもする。でもこの人の根底にあるのは、おごりや皮肉を知らぬ、底知れぬ誠意なのであるとぼくは思う。

 その誠意の一部がエッセイ集によっても結構顔を出したりする。だからぼくは彼のエッセイ集を読むことをやめられない。どんな薄っペらい体裁の本でもつい買ってしまい、どんなに忙しいときでも、彼のきれいな文章についのめりこんでしまう。そして奇妙な一瞬をすごしては、本を少しだけぎゅっと力を込めて閉じたりもする。

 これもいわゆるそういう薄っペらい体裁である。だけどもぼくには奇妙に底知れぬ本のひとつだ。

(1995.08.10)