お父さんのバックドロップ





題名:お父さんのバックドロップ
作者:中島らも
発行:集英社文庫 1993.6.25 初刷
価格:\340(本体各\330)



 中島らもの少年向け親子童話。こどもはおとなになるけれど、おとなに変わるのではない、こどもの部分はそのままにいろいろなものがくっついておとなになるのだ……そういう中島らもの物語の主人公には欠かせないこども的要素をいっぱいかかえた「お父さん」たちが、やけにおかしい 4 話構成の物語集。

 自分がなりたいようなお父さんがいっぱい。自分のお父さんにもこういう部分ってあったよな、と思い出すような懐かしいシーンもあったりする。そしてお父さんというのは、こどもにペーソスというものを教えてくれる最初の先生であったような気がする。

 お父さんの真実を越えてこどもたちはおとなになるからだ。

 中島らもの庶民的でデリケートな感覚って、たまらなく楽しくてやさしいのである。これが現代的好奇心の笑いの心に包まれてそっと出てくるのだから、考えてみれば美味くないわけがないんだよなあ……(^_^)。

(1993.07.11)
最終更新:2007年12月10日 01:06