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コンセント





題名:コンセント
作者:田口ランディ
発行:幻冬舎 2000.6.10 初版 2000.7.25 7刷
価格:\1,600

 つくづくわからないのはベストセラー。何故この本が一般大衆に購入されるのだろうか。あるいはこの本を買うのはどういう購買層なのだろうか。多くの人はこの本を読んでどう思うのだろうか。この『コンセント』は発売後一ヶ月半で7刷というほど増刷されている。著者が有名というのでもない。内容がわかりやすいというものでもない。

 そう。内容はとても難解なものなのだ。兄の死。暑さの中で飢えて倒れて自主的に自然に死んでゆく死。生きるのをやめてしまっただけという死。敢えて積極的に選んだのではなく結果的に訪れてしまった緩慢な死。妹は、その死の謎をただただ追う。死の謎と言ったって、この本はミステリーではない。兄は確かに一人でゆっくりと生きるのをやめて死んで行っただけだ。

 死。孤独。コンセントを繋いでいないと生きることのできない少年の物語。あとがきによると作者そのものが体験した友人の死と、彼から聞いたコンセントの少年の話が、小説のモチーフになったらしい。付記しておくが、著者初めての小説である。そして難解。

 何故ベストセラーになっているのか? ぼくにはわからないが、逆にとても興味深い現象ではある。インターネットのホームページから発信しているコラムによりある程度カルト的な人気を誇る女性作者であるらしい。確かに小説中、頭を初期化してもう少しディスク・スペースを作りたい……と言ったような表現が多く出て来る。誰がコンセントでだれがプラグを繋ぎに来るのかと言ったような表現も。

 そして後半になるとユンク的象徴主義、無意識、シャーマニズムと言ったところまで主人公の思いは飛ぶ。死んだはずの兄の再三の幻視。研ぎ澄まされて死の匂いを嗅ぎ分けられるようになった嗅覚。象徴的な多くの道具と幻想と思考とで出来上がった複雑怪奇な小説。なぜこの本が売れているのか、それを考えるとどうしても興味が尽きない。そういう方向で読んでみて損のない本、と言えるのかもしれない。

(2000.08.09)