バトル・ロワイヤル





題名:バトル・ロワイヤル
作者:高見広春
発行:太田出版 1999.4.21 初版 2000.9.13 26版
価格:\1,480



 映画化になったものの上映の可否をめぐってさんざん世間様を騒がせている作品なのだが、今ごろになってそういう騒ぎも気になるところとなり読んでしまった。

 中学生同士の殺し合いを小説にしたことがショッキングに過ぎると言うが、実は文明批判や大人のいんちきに対しての少年たちの清濁混合の反応はむしろあからさまで、思いのほか潔い、言わば臭い物の蓋を取り払ったようなタブー排除により、スケールアップしたビッグサイズな小説であるなあとぼくは思った。

 映画化では当然このバイオレンスに時間が集中されるのだろうが、作者はバイオレンス以上に中学生たちの心の真摯、繊細に迫って筆を走らせている。傑作だといっていいと思う。

 中学生が殺し合うっていうだけのストーリーであること、内容は面白い……とは以前から聞いていた。でもイメージしていたほどオモシロ半分の小説というわけでもなく、むしろ渾身の力作との印象の方が遥かに強い読後感だった。多分いずれはこの映画も目にすることになると思うからこそ、本読みの常で、映画より先に原作を読破しておこうと思った。まだ映画は観ていないが、それで正解だったと思う。

 ある意味で手塚漫画などにも見られるブラックな文明批判、また日本人を笑ってしまうという悲しい自己嫌悪。そうしたシニカルな空気に溢れる世界に対応するのが、主人公たちが中学生であるからこそ見えてくる、未来への可能性。そうでない老成した中学生が多過ぎるという点もこの作品の最もおかしなところだけれど、笑えるブラックな世界観の中で生き残るためにあがき続ける少年たちの徹底した描写へのパワーは、この作家のあくまで優れた能力のように思う。

 全体的なまとまりもあり、ディテールはきちんと凝っている。伏線も敷かれ、持ち越される謎も多く、キャラクターたちの個性のぶつかり合いだけに絞っても、ぐいぐい読み進んでしまう。なかなかに充実した娯楽大作ではないか! 

 多くの下読みから蹴られマイナーな版元が拾って大当たりしたという本のいわくについても、今の日本小説評論界の窒息状況とその皮肉とを表して笑えるのではないだろうか。ある意味、痛快!

(2001.03.24)