蒼い瞳とニュアージュ







題名:蒼い瞳とニュアージュ
作者:松岡圭祐
発行:小学館文庫 2004.06.01 初刷
価格:\600

 読んだ後にこんなことを知るのも少し悔しいが『蒼い瞳とニュアージュ 完全版』というのが新作で出されており、こちらのほうは全面改稿されていて、クライマックス・シーンなども全然変えられているのだそうだ。

 2004年に文庫化されたのをきっかけに、久々に松岡・法螺ーでも読んでみようかと思って買ったのに、結局食指が動かず、そのまま3年が経過。結局、WOWOWのドラマWで映像化され、しかも主演が深田恭子だっていうのでついハードディスクに録画。さて見るぞ、という段になり、いや、ドラマよりは原作があるのだから、先に原作を味わうのが、読書人としての嗜みだ、と思い直し、この文庫本に手を伸ばす。

 でもドラマのストレートな原作は『完全版』なのだそうだ。くそお!

 内容は『千里眼』『催眠』シリーズから一歩も出ていないかなとの印象。しかしある意味ではこれ一冊を読めば松岡節のエッセンスが一通り味わえる。臨床心理士の役割、と人間の心の癒し、大がかりなテロ犯罪と、これに挑む側の内部対立……大抵の松岡作品に共通する設定が、本作でも揃っている。荒唐無稽とも思える活劇部分と、リアルな診察室の風景が混在するところも然り。

 ハリウッド映画のようにテンポがよいが、どの作品もこのレベルで優れているために、食傷気味になってしまい、いつか手を出さなくなる、といった過去の歴史を、やっぱり繰り返してしまいそうな気がする。一之瀬恵梨香は、深キョンだと思えば、可愛らしくて、今後も読んでゆきたいのだが、作品そのものが食傷ではこちらが着いてゆけるかどうか不安である。

松岡ワールドは、キャラが変わるときだけ、読みにゆくことにしよう。

(2007/12/02)
最終更新:2007年12月02日 21:56