探偵ガリレオ





題名:探偵ガリレオ
作者:東野圭吾
発行:文春文庫 2002.02.10 初刷 2007.11.05 34刷
価格:\514

 『容疑者Xの献身』を読んだ際、物理学教室の助教授ガリレオのシリーズであることを知る。しかもそのシリーズが短編シリーズだったと知ったものの、それでも触手が動かなかったのは、『容疑者X……』とはだいぶ執筆時期が遠い作品群であったからである。つまり『容疑者X……』の味は、求めるべきではないだろうとの見切り。

 それを今さら手に取って読んでいるのは、そう、もちろん「ゲツク」のドラマで放映が始まったからである。ドラマは見ていないが、あの『容疑者X……』の主人公が「ゲツク」か、と思うとさすがに捨て置けない。

 但し、主人公にフクヤマはないだろう。本書の解説を佐野史郎が書いているのは、そもそも作者が佐野史郎という役者のイメージでガリレオのキャラクター作りをしたからだそうである。そうした作者の意図を無視してハンサムなガリレオをありがちなヒーローに仕立て上げざるを得ないゴールデンタイム・ドラマの悲しさ、かな。

 さて、本書、別にドラマとは関係なく純粋に面白い。まずは事件が奇抜である。謎というには謎過ぎる謎、といおうか。とにかくつかみが優れていて、どの作品も一気にラストまで読みたくなる。謎、そのものには興味のないぼくなのだが、その奇抜な謎を解決する側の物理学者と刑事のコンビネーションが、どこかアナクロめいていて楽しかったりする。

 雰囲気としては、逢坂剛の情状鑑定人シリーズに似たところがあるか。短編としての気の利いた味付け、まとまり、皮肉な結末等々、エッセンスも完全である。これなら書店で隣り合って売られていた『予知夢』のほうも買い揃えておくのだった。

(2007/12/02)
最終更新:2007年12月02日 22:34