ダブル・デュースの対決


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原題:Double Deuce (1991)
著者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker
訳者:菊池 光
発行:早川書房 1993.1.15 初版
価格:\1,553

 『晩秋』のソフトなモードから、いきなりハードタッチに切り替わる。まるでサウス・ブロンクスみたいなスラムの町を舞台に、黒人不良少年団とスペンサー&ホークの対決。いや、むしろホークが挑み、スペンサーは介助役に回るというシリーズ中でも珍しいホーク主体アクション篇なのだ。少なくともスタート時点では。

 一方、スペンサーは、スーザンの提案により実験的同居生活を始める。前作の愛犬パールの登場に続いて同居……となるとスペンサー老いたりの感が強く、ましてやホークに恋人出現である。シリーズも何弱化の道を一方で辿りそうになっている。

 スラム化したダブル・デュースの街で、西部劇まがいの対決ストーリー。何度かの敵方との接触。少年とは言いつつもホークやスペンサーのバイオレンスの対象になった悪党ども。

 でもスペンサー・シリーズで物語がストレートなまま終わりに辿り着くわけがない。ストレートな正面攻撃の作品は『キャッツキルの鷲』くらいなもので、本作も決闘の裏に真の決闘が潜んでいる。ホークは『初秋』の、あるいは『プレイメイツ』のスペンサーみたいだ。

 ホークはスラムから生まれた蝿の王で、子供たちにも名が轟いていて、ホークは昔は悪だったが今はスペンサーと同じようにいろいろなものを感じることのできる人間になっている。初期作品ではスペンサーとホークの役割分担はもっとはっきりしていた。しかし、このところホークの役割をスペンサー自ら果たしてパワーアップし、ホークについてはどんどんものわかりの良い常識人として成長してしまっている気がする。

 パーカーは本当に冷酷な連中を描くことがなかなかできない作家だと思う。悪には悪の理由があるとでも言いたいに違いない。本書はそのへんが、世のアクション・ファンには少し煮え切らず、本シリーズのファンには、やはりスペンサーだったかと、最終的には物事の治まり具合にほっとするのに違いない。

 ぼくもそうだが、それと同時にだれもが、シリーズの今後について予測しがたさを感じているのに違いない。永く続いてしまったシリーズというのは、作者や読者の思い通りにはなりにくいに違いない。