松岡圭祐の『千里眼』『催眠』研究





題名 松岡圭祐の『千里眼』『催眠』研究
著者 松岡圭祐
発行 徳間書店 2000.5.31 初版
価格 \1,300



 売れ筋のものであれば、本編は他の版元でもどんどん作者にしがみついて何らかの周辺本を出してしまう。今の出版社の人気商品偏り傾向は、出版の世界であれ、TVや音楽の世界と全然違いがない。

 松岡圭祐という作家は、まずもってエンターテインメントの構築に徹底している。ここまで徹底するというのは、それなりに稼ぎ手になる素質をふんだんに備えたプロフェッショナルと言える。

 稼ぎのプロフェッショナルというのは、一般には芸術家とは遠い存在という印象を受けるけれども、今の小説作りは日本という読書風土の上ではこういう道をある程度は意識して歩まねば衣食住にも困るってことは多少あるのだと思う。ただここまで他メディアにこびる必要があるのかと言うと、読者としてはかなりの疑問であるけれども。

 さて、娯楽を追求することに地道を傾けている自身の生き方を、映画化された自身の作品の行方に託して語っているのがこの本である。ある意味すっごく嫌な奴なのだけど、その職人気質は、確実に金を取れる種類のものであり、他の意味では賞賛に値するかもしれない。

 読者や映画の観客が気づきはしないだろうような細かい部分にとことんこだわってゆく映画監督の姿もこの作者の動きも、エンターテインメントの制作そのものを楽しんでいるかに見える。ある意味では非常に薄っぺらな世界なのだが、その開き直り加減はある意味逞しいものである。この距離感と成功の秘訣みたいな部分を思うと、娯楽とは仕事なんだな、っていうつまらない結論にまで到達してしまう。表現芸術と言うととっても高尚な気もするんだけれど。この手の作家、はて、どう扱いましょうか?

(2000.11.04)