後催眠






題名 後催眠
著者 松岡圭祐
発行 小学館 2000.10.20 初版
価格 \1,400

 催眠シリーズ前夜の物語。というより催眠の主人公たちはちょい役で、他のヒーロー&ヒロインの物語を中心に据えているから、催眠の番外編と言い切っていいと思う。

 いや、むしろエピソード1とでも言ったところだろうか? 催眠の持つ毒性のようなものを削って、あくまで美しい物語性に重心を置いて、ある意味松岡圭祐の作家的資質の面目躍如とも言うべき佳品である。

 内容としては恋愛小説でもあり、一方ファンタジィでもありと、とにかくこの作者には珍しく叙情的な物語が、催眠という道具立ての上を走ってゆく不思議。

 次に何を書くのかわからないところ、何を書いてもそれなりに面白く読者を惹きつけるところが、この作者の技量を物語っているような気がする。とにかく上手いなあと感じさせられた小編でありました。まるで浅田次郎を読んだ後のような読後感が不思議でもありました。

(2001.03.18)
最終更新:2007年10月14日 23:56