晩秋


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原題:Pastime (1991)
著者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker
訳者:菊池 光
発行:ハヤカワ文庫HM 1998.11.15 初刷
価格:\600

 『初秋』に続く父子テーマ。ポールの十年後ということで話題を呼んだが、その内容の方は、少しポールの動きや感情の流れ、母親のコミカルな愚かさに無理があるような、少し懐疑的な気持ちにならざるを得なかった。母親の相手であるリッチ・ボーモントが一番いい味を出していたくらいだ。

 本作から登場した犬のパール。犬を擬似家族のように愛するスペンサーとスーザンの姿には賛成しかねる。子供は要らない、代わりに犬を飼う----という風潮は、子供より手軽だからか。犬は子の代わりには絶対にならないぞ。少なくとも犬の登場はシリーズ設定のマイナーチェンジくらいにはなるのだけれど、飼うに至るきっかけにしても、その後の犬への接し方にしても、ある意味でとても嫌いなアメリカ的部分が鼻につくし、お遊び的な匂いがしてくる。犬が嫌いなのではなくむしろぼくは好きだから、意味のないスタッフ入りは勘弁願いたい。スーザンとの間がいくらなめらかになったからってここまでリラックスするか、とのこちらの身勝手な思い。

 さて、話を戻すとポールの未熟さ、母親の冷酷さ。並行するジョー、ジャック父子の組織の後継ぎに関する問題。事件というよりは、どうにもならない人間関係の相談役みたいなスペンサー。そんな姿を見ていると、何も本書を『初秋』の続編などと呼ばなくてもいいような気がする。何も『晩秋』なんて邦題を冠する必要はなかったような気がする。

 スペンサーばかりでなく、ヴィニィ・モリスまでが父子のコンサルタントみたいに見えてきて、ひさしぶりの軟派な一篇に少し落胆した。この中でいきなりスペンサーの過去が語られてしまうというのも、少し気になった。シリーズのそこここで少しずつ小出しに設定して欲しかったし、描写してシリーズの熟成に役立ててほしかった。シリーズとしては節目になるべきポールの事件、そしてスペンサーの生い立ちの記であるにも関わらず、そうしたいきなりの安易なサービス篇に当惑してしまった。ここ数冊でも出来のよくない作品と言ってしまえそうだ。残念。