レイミ 聖女再臨




題名:レイミ -聖女再臨-
作者:戸梶圭太
発行:祥伝社ノン・ノベル 2000.4.10 初版
価格:\857




 戸梶圭太は爆発力を持った作家だ。『闇の楽園』ではカルト教団を、『溺れる魚』では企業相手の誘拐を、爆発力と疾走感たっぷりに、黒い笑いを交えながらのパワフルな登場を見せて印象強かった。

 しかし少し調子に乗ったか。この作品に関しては、はっきり言ってやり過ぎ。ここまで好き勝手に書いていいなら作家は苦労しない。作家たるもの、自分に規範を持って欲しい。何だか先祖返りしたような作品に接してがっかりしてしまったのだ。

 前作『溺れる魚』にしてもかなり小説の表現方法として限界に近い作品とぼくは感じた。しかしこの作品の方は限界を超えた。小説ではないグロテスクなものになってしまったようなイメージがある。それでいいというなら、ぼくは単にこの作家を見捨てるだけだけれども。

 ある意味で前作の限界を超えたものが書きたくてホラーに走るのならば、それはぼくはいいことだと思う。作家としての挑戦であればいいのだと思う。

 だけど、これは、この作品は、ともかく何でもありのセメント・マッチ、掟破りの、グロテスク・スカトロ・ホラーなのである。途中までは何となく興味で読めたけれど、ラストの始末の付け方はあまりに胆略的で漫画であり、いただけない。何だかんだ言ってもぼくの読書嗜好の範疇外だということなのかもしれないけれども。多くの読者がこちらになびくならそれでも仕方がないのだけれど。

(2000.05.04)
最終更新:2007年09月30日 15:05