なぎらツイスター





題名:なぎら☆ツイスター
作者:戸梶圭太
発行:角川書店 2001.6.30 初版
価格:\1600



 『ギャングスター・ドライブ』に続く戸梶風味ドタバタ・ヤクザ・アクションの第二弾とでも言うべきか。群馬県にある那木良町という片田舎の町に都会のヤクザ二人が一千万円を抱えて失踪した部下二人の消息を求めて訪れるシーンから物語は始まる。なんだかこたえられないスタートっぷりだ。

 『Twelve Forces』でたっぷりと見せてくれたキャラクター作りが、本書ではまたまた爆発している。少しだけずれているだけにけっこうリアルで可笑しい奇人たち。この作家が大学で心理学を専攻していたというわけではないのだろうが、彼らの心理描写が実に客観的に見ていて可笑しく、悲しく、笑える。

 地に堕ちたようなちっぽけな欲望を巻き散らかす男たちと、ヤクザという揺るぎない職業の型枠。田舎の社会構造そのものの可笑しさのなかで、主人公ヤクザだけが妙に格好よい。そのヤクザが将棋にだけは目がなく、負けた相手には何度でも大局を挑むというところなどは、この格好いい男を少し庶民の側に引き戻す可笑しさであるのだけれど。

 組長の二代目を継ぐ若者がブランドもののスポーツシューズを探してインターネットで通販を申し込むシーンも本筋に関係なくただただ可笑しい。こういう小さなところにこだわるキャラクターの病的さが、小説の中でけっこう可笑しい。

 小説そのものはトリックもありどんでん返しもあり、当然この作家特有の超絶盛り上がり爆発ドタバタ・クライマックスもある。だけどそうしたプロットを支えるのが可笑しな妙に憎めないキャラたちの庶民性であることが、何よりもこの作家の魅力になっているように思えるのだ。

(2001.09.24)
最終更新:2007年09月30日 14:59