the Twelve Forces




題名:the TWELVE FORCES
    ~海と大地をてなづけた偉大なる俺たちの優雅な暮らしぶりにに嫉妬しろ!
作者:戸梶圭太
発行:角川書店 2000.12.5 初版
価格:\1,600


 ドタバタ冒険コメディに活劇をプラスして、どこまでも男たちの冒険と勇気と正義とを描いた、この作者にしては珍しいほどに、とても素直で、しかも人間味に溢れる優しきヒーローたちの物語。

 ホラー路線ではこれでもかと言うほどに残酷になれる作者だけれど、この本では地球環境の破壊、いや地球の滅亡と闘う一握りの勇者たちの愛と冒険を笑いの渦の中に描いてしまう。こういう作品に接すると、まだまだこの作者の振り子は大きく振れるみたいである。

 愛すべきキャラクターたちのそれぞれの描き分けがとりわけ秀逸で、そのいちいちがデフォルメされ過ぎた超個性ではあるけれど、やはりこの作品では素直に笑ってしまいたい。

 神秘的で説明のつかない大風呂敷を広げておきながらも、なかなかに細かく伝え合う人間関係があくまで優しい。そして活劇シーン、クライマックスへと作戦を進めてゆく展開力。大団円と呼ぶに相応しい破壊力。戸梶圭太の新機軸と呼んで言い力作であると思う。

 中島らもの大作『ガダラの豚』に似た匂いがした、大変にエネルギッシュな作品である。

(2001.04.28)
最終更新:2007年09月30日 14:57