赤い雨




題名:赤い雨
作者:戸梶圭太
発行:幻冬舎文庫 2000.10.25 初版
価格:\648




 戸梶圭太はどの作品も面白く読める。どちらかと言えばスタイリッシュとは縁遠い、庶民的な喜劇を思わせるドタバタの作風で、物事をスピーディにリズミカルに読ませ、そして途方もない爆発を最後に用意するという作家でもある。

 これまでぼくが評価できなかった駄目作品は『レイミ』くらいで、本作は残念ながら記念すべき評価仕切れぬ第二作に当たってしまう。どうもこの作家のホラー系にはあまりぼくの場合相性が良くないみたいだ。ホラー系は悪乗り(特にグロ)が過ぎるようで、ただでさえ少なめなこの作家の品性をとことん失わせしめて失墜させてしまうように見えるからだ。

 ある意味でタブーを排除したようなパワーの溜め具合がこの作家の長所であるだけに、その部分ばかりが独走してしまうと、バランスの悪い作品と称するどころか、どうにも収拾のつかない作品になって終わってしまう。これではなあ。起承転結の「起承転」で終わってしまっているぞ。

 『レイミ』に比べるとまだしもなのは、まともなヒロインが存在しているおかげだと思う。その分読者の心にどこかで碇を下ろしているだけの救いはまだある。それだけに彼女の今後を最後まで書き切らない、かつ匂わせもしないで放置してしまったところが、何とも中途半端なのである。

 テンポ、面白さ、喜劇、パワー、その他。それら、この作家が持つ長所を存分に生かすフィールドは、この作品ジャンルには、ぼくはないのではないかという気がしている。

(2001.04.28)
最終更新:2007年09月30日 14:55