溺れる魚






題名:溺れる魚
作者:戸梶圭太
発行:新潮ミステリー倶楽部 1999.11.20 初版
価格:\1,700

 『闇の楽園』に続く、エネルギッシュ・クライマックスの待ち受けるハチャメチャ娯楽長編第二弾!

 前作は長野の田舎町を舞台に、カルト教団や産廃業者を徹底的に破壊し尽くし、第3回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した。受賞字の選者たちは揃ってそのエネルギッシュな爆発力、パワーといったところに評価を集中させたようだった。

 今回は全作とはがらりと趣を変え、都心を舞台に持ってきた。暴れまくるは、落ちこぼれ刑事、女装趣味の刑事、やくざたち一派、今さらと言いたくなるような左翼(とはどこにも書いてないが)革命家たち。プロットは企業を標的にしたドタバタ誘拐劇を、あくまでグロく、あくまで笑劇的に貫いている。いやあ、愉快犯とも言える脅迫者たちを持ってきた目的の絞りにくい事件は、それだけでも十分魅力的である。

 余計な理屈の要らない肩の凝らない娯楽大作。この作家32歳くらいの若さだと思うけれど、そこが良くも悪くも結果としてコミックに近いような冒険と大胆と荒っぽさを産み出しているのだと思う。変に老成しないうちにこの手の作品をどかどかと世の中に爆弾のように投じて欲しいと思う。

 忘れがちになっていそうな娯楽小説のダイナミズムではちきれんばかりの一気読み快作! 

(2000.02.06)
最終更新:2007年09月30日 14:51