密告



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題名:密告
作者:真保裕一
発行:講談社 1998.4.6 初版
価格:\1.800

 『防壁』に見られる公務もの最前線、と言ったシリーズの中に位置付けていい作品なのかもしれない。警察官でありながら、五輪を目指すスポーツ選手として射撃に生きがいを見いだしていた主人公。早く言えば彼の挫折後日譚という形。

 でも、よく見えないのである。警察内部の灰色の部分を作者はテーマにしたかったのか。それとも男女の情念を描くための舞台装置にしたかったのか。読後感は後者だけど、読書中は前者の感覚。こんな風に作品への目線が微妙にずれてしまったのは、この作品だから。これと言ったアクセントが描き切れていないし、どちらにしても中途半端な印象が強いのだ。

 男女の情念と言うにはあまりにも薄いし、なんだか清純と言うには女性の側も誰も子供ではない。プロットの運び、驚きの大団円も作者の意図はわからないではないが、少し無理があって頭でっかちの感覚。

 同じことは主人公の論理、感性にも言え、警察官であることから、一切の法律を犯さない、正直に物事を告げてしくじることの連続。エルロイ作品でLAの警察官に慣れていると、この主人公のあまりのウブな感性に呆れる。

 そんな認め難い主人公を相手にしながらも、一応小説として完成をさせている力量はわかる。しかし核の部分がひ弱というのはやはりいただけない。何も求めるものが得られない、空を掴むような……。テクニックで強引に描いた純心小説とでも言いたくなるものが残ったのである。

(1998.08.08)
最終更新:2007年09月30日 14:12