八月の博物館





題名:八月の博物館
作者:瀬名秀明
発行:角川書店 2000.10.30 初版
価格:\1,600

 『BRAIN VALLEY』の難解さから一転! <物語>をテーマにしたこの作者にして初の文科系な作品。

 夏休みに下校ルートを変えてみたところに出現した不思議な博物館。作家を目差す小学生は、そこで謎の少女に出会い、1980年代のエジプトへ。インディジョーンズばりのアクション渦巻く古代へと遡る歴史の紐を辿る冒険がスタートする。

 そうした今時珍しくも古めかしい冒険ファンタジーと、それを書き紡ぐ作家の現在が並行して進む、またも冒険的な構成である。理科系作家との異名を取った瀬名秀明自身の自伝的な小説と言えなくもない。あるいは理科系作家と言われ続けることへの反骨が書かせたものであるかもしれない。

 だからこそ彼の物語ることへの憧れ。そこから作家的スタンスへ至る道筋を、リリカルに描いた非常に意欲的な試みとして読み取ることができる。

 美しい文章で描かれた、過ぎ去った少年時代へのノスタルジー。前二作とはがらりと趣向を変えて、瀬名秀明は文科系読者に真っ向挑戦して来たわけである。

 理科系作家が、理科系素材を用いずに小説作りに挑戦したけれど、学術的である部分は変わらないというのがどこかおかしい。誰でも楽しく読める大人の冒険ファンタジー。

(2001.03.24)