Brain Valley







題名:BRAIN VALLEY  上下
作者:瀬名秀明
発行:角川文庫 2000.12.25 初刷
価格:各\619

 なんたる難解な理科系小説だろう。大変な労作であることはわかるのだけれど、本当にベストセラーなのか? と、またまた出版という不思議現象に出くわして狐につままれたような気分。専門用語で費やされるページのなんと多いこと。難解な文章により意味不明の部分のなんと多いこと。それなのにベストセラー。

 確かに興味深い題材として、UFO、超能力、臨死体験、カルト、催眠、コンピューター上のデジタル生命、ユング的シンボリズム、進化……と、扱われる材料は、あまりにも「今」している。

 生命の意志やら繁殖への方向性などをテーマにしているという意味では『パラサイト・イヴ』の同音異曲とも言える作品ではある。そして相変わらず理科系。過度なまでの専門的用語の頻出。ある意味では小説というジャンルに対する大きな冒険ではあるのかもしれない。技術もしっかりしていて表現に凄みもある。どことなく不思議な魅力に溢れてもいる。

 いかにリアルに上手く嘘をつくかということが小説の生命であるなら、この人の嘘は凄いものなのかもしれない。しかし超文科系のぼくには、その嘘がリアルなのかどうなのかというところまではやはり行き着かん。うーむ、読後疲労の激しい本でありました。

(2001.03.24)
最終更新:2007年09月30日 13:17