心の獲物




題名:心の獲物
原題:Mind Prey (1994)
作者:John Sandford
訳者:真崎義博
発行:早川書房 1997.11.30 初版
価格:\2,200


 シリーズ第7作。

 サイコ犯罪者とルーカスを初めとするミネアポリス市警チームとのチェイス小説として、優れた面白さを持つ作品たちであるけれど、サイコ対市警というお定まりのパターンも何度も続けば、やっぱり飽きがくる。

 そこで、シリーズの新機軸と言いたくなる本書。異常者ハンティング小説という以上に、異常者との対決小説という意味合いが強くなった。もともと第一作『サディスティック・キラー』の面白さはサイコ・キラーとルーカスとの知恵比べ合戦だったから、そのエッセンスをより追求したのが本作であるとも言える。

 いつもの(?)連続猟奇殺人ではなく、今回の犯罪はなんと誘拐。少しばかりクレイジィな誘拐であるのは、このシリーズ用の独創的な設定と言っておこう。白昼堂々、派手に誘拐されてしまう母と二人の娘。彼女らに続く監禁と暴力の日々。

 一方警察に送られてきたメッセージは、のっけからルーカス・ダヴンポートを名指してくる。何とまあ犯人はゲーマーだったのだ。有名なゲーム作者であるルーカスに、彼は挑戦の電話をかけてきたというわけだ。賭けられたのはもちろん母娘の命で……。

 この本に展開されるのは、とてもとても屈折した誘拐ゲーム。ルーカスたちのハンティング行動はどうした方向へ進んでゆくのか。設定だけでも面白いのに、展開がまたもはらはらどきどき。思いがけぬクライマックスへ突入するまでページをめくる手がまったく止まらなかった傑作本である。

(2000.03.21)
最終更新:2007年09月25日 01:05