沈黙の獲物




題名:沈黙の獲物
原題:Silent Prey (1992)
作者:John Sandford
訳者:真崎義博
発行:早川書房 1996.1.15 初版
価格:\2,000


 うーん、なんて読みにくいんだ。校正の悪さが目立つ版元も版元、翻訳も翻訳、でも一番悪いのは暗喩の多い説明不足の原文なのかもしれない。でもアメリカではベストセラーのシリーズらしいから、英語なりのリズムやユーモアがもっとネィティヴの人たちには感じられるのかもしれない。ただしぼくには感じられない。

 さてここのところ低迷ぎみと言ってもいいのかもしれないこのシリーズだけど、相変わらず焦点のぼけた主人公であるなあという感覚。熱血刑事っていうんでもないし、モラルがあるっていうんでもなく、そのくせ感情を抑えられるほど人間ができてもいないばかりか、秘密なんてないとばかりにねんごろになった女性たちには心情を吐露するわ、けっこう鈍感だわ、勝手なことばかり考えているわ、でどうもぼくにはついていけない。

 そういう共感を得られない出発点からだから事件そのものをものすごく客観的に、謎解き小説やシミュレーション小説みたいにこちらも扱いがちになってしまうのをかろうじて救っているのが、悪役ベッカーなんだろうなあ、やっぱり。前作でもベッカーはなんだか他のジャンルの小説(はっきり言うとホラーですが)みたいにふるまうわ、めちゃくちゃ異常だわ、だけど、この悪党がまた出てきてくれたのが嬉しかったりしました。

 もう一つのストーリーのほうは映画「ダーティ・ハリー2」のパクリと断言しちゃっていいほどなんで、何と言っていいのかわからない。あれはシリーズの中でもけっこういい出来の映画だったけど確かマイケル・チミノとかオリバー・ストーンとかが若かりし頃に脚本書いてたんじゃなかったっけ(うろ覚え)。とにかくここまでパクって良く訴えられないものだ、と思えるくらいのサブ・ストーリーなので驚いてしまう。それなりに面白さは与えられてるんだけど、どうも気になった。それと始末の付け方だけど、これはちとダーティ・ハリーの4みたいにぼくは気にいらないのであった。どうもベッカー方面に較べるとこちらの事件はとっても薄味なのであるな、やっぱり。

(1996.02.03)