イエロードッグ・ブルース


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題名:イエロードッグ・ブルース
原題:A Little Yellow Dog (1996)
作者:Walter Mosley
訳者:坂本憲一
発行:早川書房 1998.9.30 初版
価格:\2,500


 イージー(エゼキエル)・ローリンズとマウスことリチャード・アレグザンダーのシリーズ5作目。どの作品も忘れ難い印象を残し、アメリカの郷愁を漂わせる黒人探偵のシリーズだが、イージーとマウスは本作では堅気の仕事に就いている。驚きの滑り出し。だが……。

 マウスは、スペンサー・シリーズにおけるホークであり、バーク・シリーズにおける音無しマックスである。イージーの暴力の部分を一手に引き受けるばかりではなく、イージーとの間にも常に生存の緊張感を漂わせる闇の王者。天性のキラー。だが本作ではイージー自らが暴力に向かう部分を持っている。自分の生存のためではなく自分の守るべきもののために変わり行く彼の気配。

 前作から2年が過ぎた1963年のLA。ありとあらゆる悲劇の予感。凶兆。JFK暗殺の同じ日に、LAのストリートで流れるもう一つの暴力の歌。強烈な終幕だけが待っている。

 大戦後の暗闇から生まれた彼らの存在は、再びストリートという名の暗闇に引き戻されてゆく。凡百のミステリーではなく、正統派ハードボイルドの名に相応しい素晴らしいシリーズの非常に重要な里程標とも言うべき重要な作品。

 ケネディの死の報を信じることができずにTVニュースに噛りつく7歳の娘フェザーの姿が心に残る。思えば、ケネディの撃たれた日にぼくはフェザーと同じ7歳であった。イージー・ローリンズの行く末ばかりではなく、フェザーの行く末さえも俄然気になってきてしまった。思わせぶりなラスト。アメリカのその後も、イージーらの生活の浮沈も、まだまだ先は見えない。どこまでも秀逸なシリーズである。

(1998.10.07)