ゴッドウルフの行方




原題:The Godwulf Manuscript (1973)
著者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker
訳者:菊池 光
発行:ハヤカワ文庫HM 1986.9.15 初版 1987.12.15 3刷
価格:\380

 スペンサーがシリーズとしてまだ形を成していないために、今読むと全然スペサー・シリーズらしく見えないのがこのシリーズ第一作。十余年の歳月を経てこの作品に接するとそれなりに驚かされることが多い。

 まずスペンサーがこんなに女性に手の早い探偵であったことに驚愕。母親と娘との両者と関係を結ぶ探偵というのは珍しいと思う。マイク・ハマーはかなりセクシーな探偵であったように思うけれど、スペンサーはタイプががらりと違うだけにそれなりに今読むとショッキングである。この頃の彼に比べれば、今のスペンサーはまるで修道士である。

 これを読んだ当時、ぼくは20代終わりの頃だったのだと思うけれど、当時にしても地味な作品という感じで、途中飽きがきたのを覚えている。チャンドラーは読めてもパーカーはちとかったるいなあ、っていう気がしていた。けれども今読むと、そんなに地味ではない。歳月というのは不思議な力を運んでくる。

 クライマックスがクライマックスらしいアクションで閉じてゆく、それなりに楽しい小説として今は読めてしまう。何よりもギャングであるジョー・ブロズとのその後の関係が頭にあるだけに、こうした彼らの個人的な対峙の歴史というのを今改めて紐解くのも悪くなかった。

 フィルというジョーの手下に存在感があるのだが、彼の事件についてはその後もシリーズで何度となく、そう、ジョー・ブロズが登場するたびにスペンサーの口からまるで挨拶のように口に上る。そのエピソードは、そうか、なるほど、この第一作のものであったのか……と、健忘症のぼくは嬉しそうに頷いてしまうのだった。