リング



題名 リング
著者 鈴木光司
発行 角川ホラー文庫 1993.4.24 初刷 1993.5.20 2刷
価格 \560

 ぼくは基本的にホラーは読まない人なんだが、ホラー界空前のヒットを実現したこの作品のそうしたメディア・ミックス人気とは別個にずっと気にしていた作品だった。映画化もヒットするのも遅咲きの作品だった。ぼくはこの本は角川ホラー文庫発刊のときに買ったけれども、未読リストに加えていたのはさらにれ以前、『本の雑誌』でそしてこのフォーラムで坂東零人(馳星周)が絶賛していたことによる(当時の『リング』感想はバンディーダ名義でデータライブラリに収納されている)。

 彼だって別にホラー趣味ではなく、『本の雑誌』の書評仕事でミステリー外の国産物を月に7冊程度読まねばならなかっただけであるが、ミステリー外でもけっこうな出会いがあるという。「大半の本はクソだけどな」と付け加えるけれども。

 そうして鈴木光司という地味目な作家名はぼくの中に刻み込まれ、早7年が経過してしまった。そして読んだのが、なぜか和さんと同時期。なぜ大の大人が二人同時にこのシリーズを読んでいるのだろうか?とリング・ワールドの謎のパワーを背筋に感じながらぼくはリング・ワールドに誘い込まれてしまった。

 この本はとても恐ろしい。冒険小説の要素を多分に孕みながらあらわになって行く真相が、楽しくも恐ろしい。その恐怖に関しては坂東氏が文庫解説で表明している。そして完成度の高い表現力。ハイレベルな文章力。リズム。それでいて論理性と明るさで物語を推し進め、ラストにどんでん返しという荒業で読者は奈落に落とされる気分。ある意味で完璧な小説。噂に違わぬ傑作。

 当然映画も見てしまった。映画は主人公の性別が代わり、恐怖部分をより娯楽性豊かにフューチュアしているが、それはまた別物。しかし『リング』を牛耳るアイディアそのものはあくまで鈴木光司のものであるところが嬉しかった。怪物的な作家が日本に現れていたんだ、と今更ながらホラーというジャンルに捕らわれて後回しにしていた自分が狭量であったことを猛省している次第です。

(2000.04.23)