女王陛下の騎手



題名:女王陛下の騎手
原題:The Sport of Queens (1957,r1968,sr1974)
作者:DICK FRANCIS
訳者:菊池光
発行:晶文社 1981.4.30 初版 1990.7.20 2刷
価格:\1,900(本体\1,845)

 フランシスが小説家デビューする前の半生記だから、特にフランシスのミステリーの面白さがあるわけではない。だから無理に読む必要はないと思う。しかしフランシス作品を読んできて、どうも作者自身が小説に投影されている部分が多いに違いないぞ、と疑いをもったぼくのような読者は、参考文献として、こんな本を読んでみるのもいいかもしれない。

 巻の半ば以上はフランシスのかつて属していたイギリス競馬界の説明に費やされていて、まあ競馬もやらないぼくにとっては退屈極まりないっていうのが正直なところ。だから決してみんなにお勧めはできない本であるなあ。

 ただ小説と事実の交錯地点みたいなものが、実はこの本の中にいっぱいちりばめられており、ぼくはその点にのみ興味を持って読んでしまった。フランシスの想像力のほどを改めて確認させていただいたとも言えるかもしれない。

 なお、この程度のメリットしか追えない本書であるが、『女王陛下の騎手』における作品とのつながりについては、後述する早川書房編『ディック・フランシス読本』にダイジェスト版めいたものがありました。参考文献としてはあちらだけで十分かもしれません。凝り性の方にだけそっとお勧めする本ですね、これは。

(1994.05.15)
最終更新:2007年07月16日 00:08